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2022.09.29

お客様インタビュー

お客様インタビュー 日本画家 多留裕二さん

ご自宅をリフォームさせていただいたご縁のある日本画家の多留さんにお話を伺いました。

ご自宅にもたくさんの絵が飾られ、アトリエの造作棚には色とりどりの岩絵の具がびっしりと並べられています。

 

 

- 日本画とはどういうものですか?

 

日本画とは何か、とても難しい質問です。
はっきりとした形があるわけではなく、こうやれば日本画になるというものがありません。
使用する顔料も元は油絵と一緒なんです。天然のガラスや鉱物を砕いたものを膠(にかわ)で溶くのが特徴でしょうか。油絵と比較すると水彩画に近いイメージです。
現代人は西洋画の美術教育の影響を受けているので、昔ながらの日本画を描く人は少なくなってきています。風景や人物を扱う方もいますし、油絵と変わらないような絵もあり、何ら制約はありません。
それぞれの作家さんが思い描く日本の伝統や精神文化や装飾性を、めいめいの表現の仕方で描いているのが現状です。

 

 

- 日本画家になったきっかけを教えてください。

 

絵描きになるとは全く思っていませんでした。
実は高校を卒業したあと、美術大学に入るまでに5年空いています。
浪人していたわけではなく、自分が普通のサラリーマンには向いていないとは思っていたので、カメラやギターなどしながら過ごしていました。
ある時、絵を描いてみたらうまく描けたということがありました。本物そっくりに描く細密描写と呼ばれるものです。小・中学生の頃は美術の授業が好きだったことを思い出し、イラストレーターを志したのが20歳くらいでした。
イラストレーターになるにも、自分の手を動かして物を描く、画材を使って表現することを学ぶ必要がありました。アルバイトをしながら美術研究所のデッサン教室に行き、デッサンを学ぶうち興味が深まり、引きずられるようにどんどん絵が描きたくなりました。
そうこうしているうちにその研究所で妻に出会い、日本画の大学を目指す彼女の影響を受けて大学で日本画を勉強しようと思いました。
少し時間がかかりましたが、回り道して右往左往しながらやっと興味のあるものに出会ったというわけです。
そして大学を卒業するころには絵を描いていくしかないと思うようになりました。昼間は高校の美術教師をしながら夜に少しずつ描くというスタイルでした。

 

島根の石正美術館には毎年出品して、今年は11年目になります。
その他にも創画展など、年に4,5点出品しています。発表する機会を
与えていただいて、いい勉強をさせていただいています。

 

 

- 題材の選び方はありますか?

 

子供のころから何が好きだったか、が大きいと思います。
私の場合は植物を描くことがほとんどです。昔から森を歩いたり、
自然の中に一人でいたら落ち着くからというのが理由です。
植物そのものというよりも、絵を通して何を描きたいか、なんです。

 

 

- どんなことにこだわって描かれていますか?

 

誰も描いたことのない、感動的で新鮮な現代的な花の絵を描きたいと思っています。
また、ただ綺麗なだけではなくて、植物の姿を通してその奥に深みのある精神性を盛り込みたいと思っています。
不思議なもので、写真のように見たまま描いても本物には見えないんです。
自分の気持ちに合ったような花の形や画面の構成、色使い、そういったものが画面の中で渾然一体になって完璧に決まれば絵としてのリアリティが出てくると考えています。
見る人に何かが伝わらないと絵としては力がない。どんな形にして、どんな風に表現したいかが大事で何か訴えるものがないといけないと思います。
ひとりよがりでもなく、逆に人に迎合するのでもなく、自分の様式を表現して、それを一人でも二人でも認めてもらえたらいいなと思っています。

 

 

- 難しいことはどんなことですか?

 

誰も観たことがないような、誰もしたことのないアプローチや表現の仕方で生命感のある美しい植物をかきたいと思っていますが、これが言葉でいうほど簡単にはいきません。
頭にいいことが浮かんだ!と思っても、実際に描いてみると全然違ったものになったり、つまらないことだったとがっかりする繰り返しです。描いては少しずつ手直ししてを繰り返して40年以上になりますが、思ったような絵はなかなか描けません。

 

 

- 今後はどのような目標を持たれていますか?

 

死ぬまで長く、書き続けようと思っています。
人よりも遅れて入った大学時代は、周りは若い人ばかりで、感性がほとばしったような才能あふれる絵を書く人もいましたが、4,5年したらみんなやめてしまいました。
感性だけで描いていると、何年か経つと感覚が変化したり、いろんな知識が入ったりして描けなくなるのを見てきました。残っている人はしぶとく、少しずつ変化していかれます。
大きくガラッと変化させると絶対に失敗します。自分にないものをやろうとすると無理がかかるのだと思います。
自分の核となるものに、技術や感性を少しずつ取り込んでいって、体にしみこませて少しずつ大きくなってきたのが本物になるのだと思います。焦らず、コツコツと 長い時間かけて発酵することが大事だと思っています。
画家にとってはファンが出来てくるのが対価だと思いますので、いろいろな人に見てもらいたいと思います。

 

 

 

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多留 裕二

 

<略歴>

1949 大阪府出身

1976 多摩美術大学日本画科卒

1980 創画会入選  以降出品

・京都府主催 いのち賛歌日本画100人展 入賞

・創画会 春季展賞(95年、09年)

・創画会 奨励賞(06年)

・京都日本画家協会選抜展 入賞

・万葉日本画大賞展 入選  他

2008年より日本画教室「悠画会」主催

2010年より浜田市 石正美術館企画「石州和紙に描いた日本画展」出品

 

創画会会友・京都日本画家協会会員・奈良県美術人協会会員

 

 

 


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