2024.04.30
お客様インタビュー
お客様インタビュー 『灯芯保存会』 馬場昇さん
法隆寺の南東にある安堵町にて伝統産業である「灯芯ひき」の技術などを受け継ぐために活動されている馬場昇さんにご紹介いただき、灯芯保存会会長の藤岡さん、会員の川口さんにもお話を伺いました。
- 灯芯について教えてください
灯芯は、大河ドラマや時代劇にもよく登場しますが、古くから明かりを取るために用いられてきたもので、生活の灯りとして長い歴史があります。
作り方は、い草の外皮を”ひき台”の刃でひき裂き、ずいと呼ばれる芯の分をひき出して束にして乾燥させます。長いものでは1mくらい、中はスポンジ状になっていて、とても軽く柔らかいものです。
それを油に浸して火を付けると明かりを灯すことができ、電気の光にはない、ゆらゆらと優しい揺らぎのある灯りを届けてくれます。
芯が長いほど点灯時間は長く、束ねれば大きな炎になります。

- どんなところで使われていますか
法隆寺修正会や東大寺の修二会(お水取り)、薬師寺花会式、元興寺の地蔵会に奉納しています。
お水取りでは火を灯すのはもちろんですが、灯芯を長くつないで軒先にかけて結界としても使われます。
松明がたかれるので、火災除けの意味合いもあるそうです。

お水取りの観光シーズンに合わせて、ホテル尾花・リガーレ春日野・小さなホテルでも灯明を灯していただいて、二月堂で実際に見てきた燈明の灯りを身近に感じていただけます。
また灯芯を竹串に巻き付けて真綿を絡め、溶かしたろうにつけて乾燥させる作業を繰り返すと、最近注目度が上がっている和ろうそくができあがります。
その他にも火を灯したときにでるすすを集め、膠を混ぜて墨を作ることもできます。

- 灯芯保存会について教えてください。
安堵町は大和川・富雄川・岡崎川の3本の川が流れる低湿地帯です。
その排水の良くない土地の特性を生かして、江戸時代中期から米の裏作としてい草を栽培してきました。
現金収入を得る方法として灯芯ひきが各家庭でも行われ、一大産地となりました。
当時の灯芯ひきの様子は、手早く、長く、ひいた皮がふわっと舞うようでした。

電気が普及して需要が減った昭和40年代初めを最後にい草の栽培は行われなくなり、灯芯をひける人も少なくなっていきました。
平成8年にかつてのい草生産と灯芯ひきを知る有志約20人が技術を次世代に受け継ごうと「灯芯保存会」が結成され、現在では約45名の会員がボランティアで参加し、安堵町歴史民俗資料館前の田でい草と菜種を栽培し、ほぼ毎月、資料館での灯芯ひき体験会で指導も行っています。

- やりがいや難しい点は?
灯芯は寺社の行事や修行の場に欠かせないものであり、また貴重な技術が今も息づいていて、それを受け継ぐという重大な任務に携われることに意義を感じています。
また資料館での体験会には町内だけでなく、県外から来られたり、いろいろなところで紹介していただいたりして、興味を持ってくださる方が増えることがとても嬉しいです。
難しい点は、伝統産業はどこも同じかもしれませんが、後継者問題です。
い草の栽培は水の管理が大変ですし、灯芯ひきも慣れないと途中で切れてしまうなど経験が必要とされる作業で、その技術を次世代に受け継いでいくことが課題です。
- 今後の展望は?
灯芯ひきの貴重な技術を伝えていくには、少しでも長く続けることが大切だと思っています。夏休み期間の子供たち向けの灯芯ひき教室や、ひいた跡の皮の部分である”いがら”を使って小物をつくる体験を通して、その子供たちが将来、技術を伝承していって欲しいと願っています。
また生まれ育った地でもあり、昔ながらの町並みもたくさん残っている安堵町の認知度が上がり、発展に繋がればうれしいです。

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