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2023.01.26

スタッフブログ

視覚優位の経験は真実を見抜けない

輪和建設、大工の國分です。

 

今回も「名建築は体験が9割」から一部抜粋して話していきたいと思います。

 

まずは今の建築が作り出す状況に対して、軽くジャブを放つ分章を紹介します。

 

—建物は地形の特性や気候風土、地域の文化や社会、そして建築の伝統がもつ特性から切り離され、あらゆる面でその場から分断された、ただ美的な志向をもつ単独のオブジェとして経験されるようになっている。(中略)建築の外部形態という視覚的表現への固執が、インターネットへの投稿から出版物まであらゆるメディアを支配し、一般的な人々の建築への認識と理解を形成している。—

 

この文章を読むたびに、タイル風のサイディングを用いた、あのヨーロッパ風のデザインの住宅が頭に過ぎるのですが、つまるところこの文章は、視覚的なビジュアルに目を向け過ぎると、好きな見た目にしたいという思いになり、最終的にはその街並みや文化を破壊しかねない、いや破壊している、ということを言っているのだと私は解釈しています。そして、そのようなビジュアル重視の価値観の原因の一つがメディアの伝え方であると。

 

フランク・ロイド・ライトは「写真は建築を経験する際の真の本質を捉えることに完全に失敗している」と仰っていますし(学生時代に写真だけを見て分かった気になっていた自分としては非常に耳が痛い)、本書の中で「建物の外部形態を眺める等といった”視覚的な体験”には距離感があり、内部空間の体験は”五感の全て”に訴えかけその一部として包まれるような親密な感覚を作り出す」との記述もあります。

 

部屋の明かりを弱くしたとき、ふうっと安らぐ感覚があります。視覚の優先度が下がり、その他の感覚機関が有意になるため、五感で空間を感じれている状況なのだと私は解釈していますし、親密な感覚ってそういう事なんだろうなと思います。

 

とにかく写真で見ただけでは視覚情報しか得ることはできません。視覚優位な状態ではきっと真に良い建築とは何なのかは分からないのでしょう。そして、比較的視覚のみで判断できる外部形態に自己の拘りを持ってくるとそれは、地域にとってマイナスに作用する可能性もあるのかもしれません。

 

是非とも建築、しいては住宅においては、実際に実物を見に行って内部空間を五感をつかって体感していただきたいなぁと思います。

 

そのとき、健やかな気持ちになれたのならば、きっとそれは、皆様にとって良き家なのだと思います。

 

 


「吉野の木を伝統技法で建てる工務店」輪和建設株式会社では、永く健やかな暮らしを求め、自然素材にこだわった奈良の木の家づくりをしています。
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