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2024.06.29

家づくりのこと

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現場から

発酵した壁

こんにちは!

中島です。

 

奈良市でリフォーム工事をさせてもらっています。

大規模改修の場合、大方は解体屋さんがバラしてくれていますが、細かい部分などは残っているので納まりを考えながら大工がバラします。

 

抜かないといけない壁が残っていたので、解体していきます。

 

この建物は築90年ぐらい(棟木に書いてありました)なので、壁はもちろん土壁です。

 

仕上げ塗りと荒壁を落としました。

真ん中の縦は半柱、真ん中横は通し貫、この二つの部材は木です。

細かく格子状になっているのは竹を細く割ったもので、藁をよって作った藁縄で編んであります。

藁縄を解いて横方向の竹を取りました。

ここまでくれば食いつきもないので、かるくどつけば残りの土壁も簡単に落とせます。

解体完了です。

一間の壁一枚でこの量の土と

(一袋15〜20kgくらいですかね?)

 

これだけの竹が使われています。

 

90年経った今でも竹の柔軟性は失われず、しっかりしています。

折ってやろうと思ってもなかなか折れません。

 

土壁の解体は土埃こそすごいものの、全然不快ではありません。

ものすごい量の土埃が出ても、くしゃみや鼻水ひとつまったく出ないんですよ。もちろん鼻の中は真っ茶色になりますが。笑

 

新建材の加工をしているとあまりいい匂いとは言えない匂いがしますし、ものによってはくしゃみや鼻水が止まらなくなったり。

 

無垢材なら大丈夫かといえばそうでもなく、人工乾燥された木材も個体差はありますが、くしゃみ、鼻水が出ます。機械乾燥させるとなんらかの成分が変質してしまうんですかね?天然乾燥材でもまったく出ないかと言うとそうとも言い切れないのですが、加工は天然乾燥材の方が断然しやすいので、乾燥方法で同じ無垢でも別物になっているとは思うんです。

 

話が逸れましたが、土壁は不思議です。

もう何軒も土壁の解体をしてきましたが、どこの土壁もほぼ同じ匂いです。

これは土の製法によるものなんですかね?

 

年配の大工さんに聞いた話では田んぼの一角で田んぼの土に藁をすき込んで放置し、しばらくすると土に粘りが出てきて土壁に使えるようになるらしいです。

 

藁をすき込むとなぜ粘りがでるのかは菌の働きのようです。

藁にいてる菌が発酵する事によって粘りが出るみたいです。藁にいてる菌といえば納豆菌なんですかね?ネバネバなので多分そうですね。ワラい

 

発酵した土だから土埃を吸っても鼻水やくしゃみがでないのかなーなんて考えたりしてます。

昔の家は家全体が発酵していたといっても過言ではないですね。笑

 

粘りが出た土は藁がつなぎの役割も果たし、壁に分厚く付けても落ちない、竹小舞にしっかり食いつく、壁に適した建材のできあがりです。

 

これまたすごいのが90年前の土壁を解体しましたが、この土に水を入れて練り直すとまた使うことができるんですよ。実際に以前古民家の改修の時、部分的に補修をするにあたりその家で解体した土壁を練り直して使いました。

 

これはすごいことです。

いまある建材の多くは作った時が品質のピークで、あとは落ちていく一方のものがほとんどです。

90年先、少し手を加えれば再利用ができるなんて事は全くもってないと思います。石膏ボードも再利用可能みたいですが、そのほとんどがゴミとなり、ゴミと課題が山積みのようです。

 

土壁はいらなくなったら土に還りますしね。

そもそも土ですし。笑

 

先人はものすごいものを考えついたものだと感服させられます。

 

技術の発達とともに代わる材料が開発され、素早く手軽に家造りは進むようになり、土壁を用いることはほぼなくなってしまいました。

 

よく「昔は代わるものがなかったからそうした」なんて聞きますが、そうではない様な氣がします。

だって竹と藁縄を細かく編んで竹小舞作って、藁をすき込んだ土を発酵させて土を塗る。どれをとっても手間と時間がかかります。

絶対もっと簡単な方法が昔にもあったでしょ。笑

それでもこの方法が確立され、家造りの技術として長く受け継がれてきたのはほんとうにいいものだからなんじゃないかなと思います。

 

誰かが言ってました。

 

「現代文明なんてものはゴミの塊。

いずれ自分たちが生み出したゴミに埋もれて死んでゆく」

 

ひねた考えかもしれませんが核心を突いている言葉のようにも思え、考えされられます。

 

自分がよければそれで良いのか?

先の、もっと先、もっともっと先を考えられているか?

 

昔の人が家を建てるときに考えていたのはその先だったんですかね。古民家と呼ばれる家の造りの手間暇の掛け方を見ているとそんな氣がします。

 

自分の代、子、孫その先に受け継げるような家を目指し、限界がきて壊してもなお土に還る、本当にいいものを考えて行き着いたんじゃないのかなと。

 

まあ、代わるものが無かっただけかもしれませんが。ワラい

 


「吉野の木を伝統技法で建てる工務店」輪和建設株式会社では、永く健やかな暮らしを求め、自然素材にこだわった奈良の木の家づくりをしています。
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